その技法について説明します。
銅版画
手描きの線より細い線が作れるので、繊細で精密な表現が可能です。 大きく分けて2タイプの技法があります。
直接技法
直接技法は道具で銅板を直接彫ったり引っかいて傷を付けたりする方法で、古くから行わ れたエングレーヴィング(engraving)やドライポイント(dry-point)、メゾチント (mezzotint)などがあります。
間接技法
間接技法とは、酸などの腐蝕液で版材を腐蝕して製版する技法のことを言います。この中 に銅版画技法として最も一般的に知られているエッチング(etching)があり、それとよく 併用される技法で水彩画のように広い面積に調子を付けるアクアチント(aquatint)があ ります。
エングレーヴィング(engraving)
銅版表面にビュランburinという道具で直接版を彫り、インクを塗り、彫刻したラインにの み残るように拭き取り、紙にプレスします。およそ1600年から1850年までで最も一般的な アンティークプリントの技法でした。色は1色のみしかプリントされないので、多色にす るにはプリント後に手彩色されていました。 当店の出展品の多くはこの技法により印刷されたものです。 銅板はソフトなため印刷するたびに彫刻したラインが摩耗して、シャープさがなくなるの で、余り多くは印刷出来ません。 1850年以降は、銅板に代わり、強度が優れている鉄板が使用されるようになりました 。


ドライポイント(dry-point)
は版材よりも硬い材質の道具(鋼鉄のニードル・ダイヤモンド針)で、版に 傷をつけ形象を表現する技法です。 銅板を引っ掻くと押し出された銅が線の両脇に盛り上がりめくれ(バー)ができます。刷り のときにこのめくれにインクが引っかかり拭き残され独特のにじんだ線となります。これ がドライポイントの特徴です。 初期の頃はエングレーヴィングの補修的に用いられ、めくれは削り取られていましたが, 後にはにじんだ線の特徴を生かす表現をするようになりました。
メゾチント(Mezzotint)
この技法はドライポイントから派生した技法です。銅板の表面をベルソーやカッターの刃 などで目立てをしてざらざらの素地をつくり、白くする部分をスクレパーで削りさらにバ 二ッシャーで均し、刷った時にインクが拭き取れるようにします。このようにして作られ た作品は、黒から白への諧調で表現され、この技法の特徴でもある中間調子の美しさから メゾチントの名前がつきました。
エッチング(etching)
「エッチング」とは腐蝕の意味で、腐蝕を使う技法は全てこの技法に含まれます。 一般的には腐刻線によるものをエッチングと呼んでいます。 エッチングの基本は、腐蝕の時間によって腐刻の深さやそれによってできる線や点の太さ が違ってきます。
アクアチント(aquatint)
松脂の粉をダストボックスという密閉された箱の中で舞い上げて、その中に版を入れ、落 ちてくる粉を受け止め、版を熱する事で松脂を版に定着し腐触しました。 色や調子をつけたくない部分を黒ニスなど防蝕剤で塗り、松脂の粉を散布します。版の下 から熱し松脂を溶かして定着します。腐蝕液につけ短時間腐蝕した後、弱い調子の部分を 黒ニスで止め、再度腐蝕します。短時間腐蝕した後、次に弱い調子の部分を止め腐蝕し、 これを繰り返す事で調子の幅を広げて行きます。 アクワチントが考え出される以前は、諧調をつくる時は細い線や点のエッチングまたはド ライポイントで描画していました。 アクワチントのみで制作される事は稀で、エッチングとの併用が多い技法です。
リトグラフ(Lithograph)
リトグラフの原理は、水と油が反発し合う性質を利用して刷る印刷技法です。 版の平面にクレヨンなど脂肪性物質を使って描画します。その後版全体にアラビアゴムを 塗布し、版を親水性・親油性に分け、時間をおいて版とアラビアゴムをなじませたら、薬 品を使い製版します。版材として石版が当店での出展品の時代には使用されていました。
クロモリトグラフ(chromolithograph)
多色刷りのプリントにはリトグラフの技法で色ごとに違う石版によりプリントされ、それ がクロモリトグラフです。 1830年頃に発明されこれが最初の多色印刷技術でした。それまでは手彩色によるもの しかありませんでした。